ホームズの子孫には敵わない
長い廊下には、誰も人がいない。私が逃げないと思っているのかな?

「えっと……窓は……」

廊下には、大きな窓があった。外はもうすっかり暗い。おまけに森の中にこの建物はあるようで、木々が目の前にある。都会のロンドンとは大違いだ。

「満月があの位置にあるから、今いるのは……」

月の位置から、自分がいる場所の方角を調べる。この方法も二人から教えてもらった。二人には教えてもらってばかり気がする。でも、今回はそれが役に立っている。

「なら……」

私はナイフを再び取り出し、木造の床に突き立てて傷をつけていく。ー ー ーーー ー ーーー、ー ーーー ー、ー ー ーーー ー ーーーと床に書いてすぐに部屋を出る。ホームズさんたちがメッセージに気付いてくれるといいんだけど……。

廊下を走り、とにかくこの建物の外へと急ぐ。うまく逃げられなかったら、ホームズさんたちにまた迷惑をかけてしまう。

廊下には何も隠れる場所がない。廊下にあるドアを開けてみても、何もなかった。急いで逃げなくちゃ……!
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