ホームズの子孫には敵わない
「怖いですか?体が前より震えていますよ?」

「ふ、震えてなんか……」

モリアーティが、着ているスーツから拳銃を出したり隠したりする。いつか発砲されるのではないかと私は体を強張らせる。

「あなたには、あの探偵をおびき寄せる大切なおとりになってもらわなければなりません。次にこんなことをしたら次はどうなるか……。予想できますよね?」

モリアーティは私に拳銃を突きつけ、ニコニコと笑いながら訊ねる。私は頷くしかなかった。我慢していた涙がどんどんあふれてくる。

「ああ、泣いてしまいましたか。そんな顔も素敵ですね」

モリアーティの指が涙を拭う。ホームズさんやワトソン先生とは違う感触に寒気が走る。嫌だ、触れられたくない!

「そこまでだ!!」

ずっと聞きたかった声に、私の目から涙が止まる。一瞬幻聴かと思ったけど、それはすぐに違うとわかった。だって聞き慣れた足音がすぐ近くに……。

「モリアーティ、和香を返せ!!」

「和香、助けに来たよ!!」
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