ホームズの子孫には敵わない
「そうなんですか。なんか、意外です」

素直にそう言うと、ワトソン先生は嬉しそうに笑って私の頭を撫でる。その心地よさに私は目を細めた。疲れている時にこんなことをされると、嫌でも落ち着いてくる。

ベーカー街に向かって歩いていると、私は買い忘れたものがあることに気付いた。今日の夕ご飯は白身魚のホイル焼きをする予定だけど、トッピングとして乗せるレモンがなかったことを思い出す。

「ワトソン先生、すみません。レモンを買ってきていいですか?」

「いいよ。一緒に行こう」

疲れているはずなのに、笑って許してくれるワトソン先生に申し訳なさを感じつつ、私たちはスーパーへと向かう。

最近は、あまり視線を感じなくなった。とは言え油断はできない。普段ならショートカットとして通っているちょっと危なそうな薄暗い通りも通らず、まだ人通りの多い道を歩いていく。

「和香の料理、楽しみだな〜。今日は何を作ってくれるの?」
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