溺愛の価値、初恋の値段
「羽柴先生、雅のウエディングドレス姿を見たら、号泣しそうだね?」
「……いまのところ、大きな披露宴をするつもりはないけれど、ガーデンパーティーみたいなことができればいいかなって、思ってる。ロメオのお父さんもちょうど日本にいるし、大がかりな準備もいらないし」
「ガーデンパーティー! いいね! ステキだねっ!」
すっかり話が弾み、気づけば一時を過ぎていた。
「海音ちゃん、雅ちゃん。そろそろランチにする? おすすめは、ボリュームたっぷりのパンケーキだけど」
「征二さんの作るものはなんでも美味しいので、おすすめでお願いします!」
征二さんは、雅の褒め言葉に苦笑しながら、鮮やかな手並みでおいしいランチを作ってくれた。
パンケーキは、スイーツ系ではなく、お食事系だ。
ポーチドエッグに厚切りハムとサラダホウレンソウ、こんがりキツネ色のパンケーキ。甘党の人のために、小さなココット皿で蜂蜜のかかったマスカルポーネが添えられている。
「美味しそうっ!」
ひと口食べるごとに歓声を上げる雅と二人、さまざまな食感を楽しんだ。
「海音ちゃん。もし、何かあったらうちにおいで。遠慮はなし。僕も京子も、いつでも大歓迎だからね?」
帰り際、さりげなく征二さんが言ってくれた。
わたしと飛鷹くんの間に、何かあったのだとわかっているのだろう。
でも、無理に聞き出すことはせず、逃げ道だけを与えてくれる。
わたし自身が、どうしたいか決められるように……。
「また、来ます」
「うん。また来てね? 今度は……大切な人と一緒においで」