溺愛の価値、初恋の値段
「……海音っ!」
乗って来たばかりのエレベーターへ戻り、「G」のボタンを連打した。
向こう側のボタンが押されるより早く、エレベーターが動き出す。
あっという間に一階へ逆戻りしたエレベーターの扉が開くなり飛び出して、必死に足を動かした。
息が切れ、足がガクガクして、もう歩けないと思った時、バス停が見えた。
到着したバスに乗り込む人の後ろへ駆け寄る。
行き先も確かめずに乗り込んだバスは、駅へ向かう最終便だった。