溺愛の価値、初恋の値段




ロメオさんとの電話を終えて、ふと時計を見ると四時近かった。
窓から見る空は、だいぶ日が傾いている。


(飛鷹くん……大丈夫、かな。具合悪くなってない、かな……?)


いつも、気持ちいいくらいよく食べる飛鷹くんなのに、食べられずにいるなんて、心配だった。


(……帰ったほうがいい、よね)


飛鷹くんと向き合うことへの怖さやためらいと、心配な気持ちを天秤にかけるまでもない。


ロメオさんが教えてくれた、壁紙にしている二次元の彼女の話。
雅から聞いた、事故ではないのにわたしを引き取りたいと言った話。
音無さんが教えてくれた、わたしの「味覚障害」に気づいていたという話。
葉月さんが言っていた、最後までしていないという話。

いろんな人から聞いた、いろんな話に出て来る飛鷹くんを一つにしたら、とてもわたしに都合のいい『飛鷹くん』が出来上がる。

そのまま信じるわけにはいかないけれど、飛鷹くんがわたしのためにいろいろしてくれたことは、事実だ。
同情からかもしれないし、罪悪感があるからかもしれない。もしかしたら……あの頃できなかったことをしてみたいだけかもしれない。

でも、わたしのことを考えて動いてくれたことに変わりはない。


(やっぱり……帰ろう)


落ちた画面をもう一度立ち上げて、今度こそ飛鷹くんにメッセージを送った。



『いまから、帰ります』



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