溺愛の価値、初恋の値段
二人で作るオムライス
買い物袋を手に、家路を急ぐ主婦らしき女性。部活帰りの大きな鞄を背負った中学生。手を繋いで歩く高校生たちの初々しい姿。帰社を急ぐ会社員。
目指す場所がはっきりわかっている人もいれば、ぶらぶらと歩いている人もいる。駅の周辺には、年齢も目的も所属している場所も違う人たちが、ひしめき合っていた。
人の流れに乗って歩くうちに、食材を仕入れてから帰ったほうがいいのでは? と思い立つ。
飛鷹くんのマンションへ向かう前に、駅ビルの地下に入っているスーパーに立ち寄ることにした。
(晩ごはん、何にしようかな……。お肉と菜の花の炒め物にしようかな……あじの蒲焼きもいいかも? あ、タケノコの土佐煮とか……春キャベツのナムルとか)
旬の食材が並ぶ売り場を見て歩きながら、食欲がないのなら、煮込みうどんなんかのほうがいいだろうかと考えていたら、ふと山積みになっている「卵」と「特売」のPOPが目に留まった。