キミ観察日記
 そう言われて与一は思い出した。

 二階をみて回っていたとき、一部屋だけ鍵がかかっていたことを。

「……ちょうど。あの位置だったな」

 最奥の、開かずの扉。

「あのこも、たべたかったのかな」
「さあ。中に戻るぞ」
「うん」

 別荘に入ると、男がソファでくつろいでいた。

「後片付け、ご苦労様です」
「あの。先生」
「なにか」
「……いや」
「二階の【アレ】のことなら。気にしなくていいです」
「やっぱり人がいたんですね」
「当分、出てくることもないので。あの部屋には半年は暮らせるだけの食料も置いてありますし。トイレ、シャワー完備です」

 いったい誰なんですか、と。

「それよりここ、夜は星が綺麗なんですよ。今日みたいな日だと降ってきそうな星空が見られるでしょう。紅花さんと天体観測でもしたらどうですか」

 そのひとことが、与一の口から出てこない。
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