キミ観察日記
「なんだあいつ」

 与一は近寄るまいと心に決めた。
 しかし、

「マユね。ゲームばかりしてるの」

 少女は、繭の鍵つきの部屋にたびたび訪れるようになった。

「そんなこと知るか。あの部屋に近づくな」
「なんで?」
「なんでって……繭といて……楽しいか?」
「うん」
「……そうか」

 夕食の準備ができても繭の部屋から出てこない少女を、与一は迎えに行く。

「紅花。降りてこい」
「あ。それね。センセイのいえにもあるよ」

 となりから繭を覗き込む、少女。

「できるよ、わたし」
「……近い」
「え?」
「離れろ」

 ははーん。
 生意気かガキでも女の子には弱いんだな。

 与一がそんなことを考えていると、

「こっち見んなオッサン」

 少年が与一にクッションを投げつけた。
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