キミ観察日記
「オレは……」
「だいじょうぶだよ。ヨイチはこわくない」

 少女の言葉に、少年の戦意が喪失する。

「……悪かった。オッサン」
「悪いと思うならオッサンいうな」
「オッサンはオッサンだ」
「僕こそすまなかった」

 与一の言葉に、少年が目を見開く。

「嫌がっていたのに、強引なことしたな」
「わっ……わかればいい」
「でも。やっぱり顔が見えた方がよくないか」

 そう言うと、与一が、少年の背後から前に移動した。

「触るぞ」
「……触んな」

 肩を震わせ、瞼をギュッと閉じる少年。

「すぐに終わる。痛くもしない」

 そう言うと、与一が少年の前髪と後ろ髪を、一つにまとめた。

 少年は、おそるおそる、瞼を開く。

「どうだ。視界が明るくなったろう?」
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