キミ観察日記
 少女の口から、よだれが垂れている。

「なにを見つけたと思います?」

 少女は口をとじることができない。

「ああ、失礼。それでは話せませんでしたね」

 男が少女に近づいていくと、少女は大きく目を見開き、声にならない叫びをあげた。

 少女の大きな目から、涙がこぼれ落ちる。

 ガタガタと震える肩、足、手指。
 しかしそれらを思いのままに動かすことは困難である。

 手首と足首にはロープが巻かれ、椅子にしばりつけられている。

 男が、ポケットに手をいれる。
 取り出したのは刃渡り六センチほどのナイフ。

 少女が、頭を横に振る。

「動くと頬が切れますよ?」
「……っ」
「おやおや。お漏らしですか? イケない子ですね」

 男は少女に咥えさせていた猿ぐつわを手際よく切ると、少女がゴホッとむせた。

「そろそろ喉がかわきましたか?」
「……すけてっ、助けて!!」

 少女のすがるような目を見て、男はナイフを投げつけた。
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