キミ観察日記
 その丸い水槽は、水深5メートルあるらしい。

 うっかり少女が近づき落ちでもすればーーそうならないよう囲いはあるからその心配もなさそうだが、まず溺れる深さだ。

 プールを取り囲む観客席の一番前に座った、与一と少女。

「ここだと濡れるんじゃないか?」

 足元が他の席に比べて水気があることに気づき、嫌な予感しかしない与一。

「そろそろ始まるな」

 長い栗色の髪を隠すように帽子を被り、青いシャツに黒のズボンをはいた少女は、まるで少年のよう。

 家の中ではこんな格好はしない。
 白や桃色のワンピースを着せている。

 そんな少年と少女は、仲のいい兄弟にでも見えるかもしれない。
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