キミ観察日記

 ひょっとして今度こそ本物の私服警官が?

 そう思った与一だが、男の背後にいる人物らの表情をみて、そうではないと感じた。

 皆が皆、怒りに満ちている。

 男性も、女性も、全員がすごい剣幕で取り押さえられている男を睨んでいる。

 ここは地獄行きの列車なのか、と思わせるような。

 そんな雰囲気に車内が包まれていく。

「最期に言い残したことはあります?」
「殺してやる!!」

 暴れる男は手足を動かすこともままらない。

「まったく。こんなゴミに。…………あの子は」

 泣いているんですか、先生。
 それとも怒っているんですか。

 与一は問うことはできない。
 きっとその両方だと思ったから。

「そろそろ始めちゃう?」

 フードを深く被った少年が、つぶやく。
 その口元は歪んでいた。

「……繭」
「オッサン。そいつ連れて隣の車両行け」
「でも」
「いいから。ここから先は、オレらの仕事だ。帰って飯でも喰ってろや」
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