キミ観察日記
 ジタバタと手足を動かそうとするも、身動きがとれずにいる男。

 そんな男を取り囲む集団。

「うごけないか? そりゃそうだ」
「……俺に、なにをした」

 声を出すだけで顔を引きつらせる、男。

「チクッとしたろ。アレが効いてくる頃だ」
「薬か? いつの間に……」
「鬼ごっこに夢中だったから気づかなかったんだな。どんどん力が入らない身体になっていく。呼吸するのも苦しいか。はは。もう何度も実験したから効果は確認済みだけど。一番マヌケだな、オマエ」

 少年は、倒れている男にビデオカメラのレンズを向ける。

「しっかり記録しておいてやるよ。そのうち世界配信されちゃうかもな」

 ビデオを覗く少年が、ほくそ笑む。

「それもセンセイ次第ってわけだが」

 男の口にガムテープが貼られ、頭に袋を被せられる。

「知ってるか。この電車が次に停まるまで、わりと時間あるってこと」

 男は手足をあらぬ方向に曲げられると、強引に大きなスーツケースに詰め込まれる。

「痛いだろ? それ、動けなくなるけど、痛みは感じるようにできてるらしいな」
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