キミ観察日記
◇
「今帰りか」
制服姿の少女を、少年が呼び止める。
少年の髪は白に近い金色で風にサラサラとなびいており、彼の傍らには大きなバイクが停められている。
「……待ち伏せしないでよ」
「乗れ」
少年は少女にヘルメットを投げた。
「電車で帰りたい」
受け取ったヘルメットを恨めしそうにみる少女。
「オレのうしろに乗りたくても乗れないオンナがどれだけいるか知ってる?」
「だったら尚更。余計な恨み買いたくない」
「いいから乗れって」
少女はため息をつき、ヘルメットをかぶるとバイクの後部座席に乗った。
「ちゃんとつかまってろよ」
「わたしをふりおとしでもしたら。ヨイチがあなたを殺す」
「オッサンは相変わらずのシスコンか」
「ヨイチは、兄じゃない」
「過保護なパパだったな」
「ちがう」
「なら。……オマエら、デキてんの?」
少女がなにも答えないでいると、少年が顔を引きつらせる。
「ついに血迷ったかオッサン。どんなけ欲求不満なんだよ。数ヶ月前まで中学生だった青臭いガキだぞ」
「ヨイチはなにもしてこない」
「へえ。それじゃあアイツ、23にして未だーー」
「ヨイチはマユと違うの」
「なんだそれ」
「遊び呆けてない。一生懸命勉強してる」
「それならオレもやってるぞ。聞いて驚くな。テストは常に成績上位をキープ」
「偏差値の低いヤンキー校で威張られても。全国模試で結果出してからにしたら。……無理か」
「はあン!?」
「わたしはいつでもいいのにな」