キミ観察日記
『君は素晴らしいことをしたのです』

 実際に少年を迎え入れたのは、あの男だった。

 男は、少年に労りの言葉をかけ、そして褒め称えた。

『その年で自分の身を守れるなんて。本当に強い子だ』

 男だけが少年を受け入れた。

『自然は好きですか?』

 自由と生きるための知恵を与えた。

『この場所が君にとってオアシスだといいのですが』

「センセイとは利害が一致しすぎている。それだけに互いに利用しているという自覚が常につきまとう」

『どうか。私に、力を貸してくれませんか』

「初めて人の命を奪ったとき、一種の快感を覚えた。殺人行為そのものへの興奮よりも、消えて欲しいやつをこの手で消せたことへの達成感……とでもいおうか」

 少年は、知ってしまった。
 カラダが覚えてしまった。

「そいつがいなくなっても誰も困らない。なんなら世界はほんの少しだけ平和になった。人の命を奪ってはいけないなんて、ウソだと思ったね。奪い方や奪う相手を間違えなければ、誰かが救われることだってある。そう思い知ってからは、殺人衝動が抑えられなかった」
「センセイは【ちょうどいい(ターゲット)】をマユに用意した」
「そうさ。そうやってセーブした。そのうちの一人が、偶然オマエの親父だったにすぎない」
「なんだっていいよ。マユのおかげで……アイツがこれ以上、罪を重ねずに済んだ。それは紛れもない事実でしょ」
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