キミ観察日記
 いつかそれに触れた人々は、それが、彼女自身の物語だなんて知りもしません。

 思いもしないでしょう。

 ですが、どうか、その作品に触れた者が、人の命を奪うことの残酷さを思い知り。

 拷問殺人という極めて卑劣な行為に対する罪の軽さを、もっと問題視する社会になればいいなと思います。

 簡単に変わるような世の中でもないと、悲しいほどに痛感しています。

 だから、あなたは、歪んでしまったのではないですか?

 紅花に尋ねられました。

 僕は、あなたになろうとしているのかと。

 つい、笑ってしまいました。

 とても先生にはなれる気がしなくて。

 それでも。

「……僕は。先生を目指しますよ」

 あの事件を、ただ風化させるつもりありません。
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