キミ観察日記
「オマエら。なんの話してんの」

 少女たちの後ろに背の高い男が立つ。

「死刑だの税金だの。イマドキのJKってそんな話題がブームなわけ?」
「あーっ!! 繭くん」
「バーカ。先生って呼べ」

 持っている出席簿で少女の頭を軽く叩くと、少女はキャッキャと喜んだ。

「だって。繭くん大学生だし」
「教育実習で来てんだから、【センセイ】だろ? おら。席つけよ」
「今日は繭くんが授業するのー!?」
「そういうこと」
「ねえねえ。繭くん知ってる?」
「なにを」

「「【キミ観察日記】!!」」

 それを聞いた男が目を細める。

「……カンサツニッキ」

 男の色っぽい表情と声に、生徒らが目をハートマークにさせた。

「なんだそれ。AVのタイトルか?」
「ちがーう!」
「いいから席につかねーと遅刻つけんぞ」
「やだ、繭くんの鬼!! 悪魔!!」
「ハイハイ」

 少女たちの背中を見つめる男が、

「知ってるなんてもんじゃないっつーの」

 ほくそ笑んだことに、誰も気づきはしなかった。
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