キミ観察日記
 食事が終わると、与一がタイミングよく部屋に戻ってきた。

「全部食べたんだな」

 頭をたてに振る、少女。

「来い」

 足枷を外し、少女に自分の前を歩くよう指示をした与一。

 二人がやってきたのは、洗面所だった。

「歯を磨け」

 用意されたコップと歯ブラシを見て、少女が目をぱちくりさせる。

「どうした。やれよ」
「うん」

 少女が歯ブラシを手に取ると、それを自身の歯にあてていく。

「おいおい。そんな乱暴にすんな」
「……へ?」
「お前歯磨きもまともにできないのか?」

 与一が、少女から歯ブラシを奪う。

「口をあけろ」
「…………」
「あけろ」

 あーんと口を開けた少女の歯を見て、与一は目を見開いた。

「……ちっせ」

 軽く、歯にブラシをあてていく。

「いいか? 最初は奥からだ。外側と噛む側と内側、それぞれ四ヶ所。それから上下の前歯の表面と内側。まとめて磨かず、一~二本ずつ丁寧に 」
「ふえ?」
「……わかんねーか。図解が。いや、模型が欲しい」
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