キミ観察日記
「生きていて誰かに山の説明をすることになるとは思わなかったな」

 与一はタブレットで【山】を検索し、写真を見せてやる。

 画面には【山】というキーワードに関連する写真がズラリと並んでいた。

「これが、山だ」
「……ヤマ」
「漢字で書くと、【山】」
「これも、ヤマ?」

 少女が指差したのは、雪山だった。

「そうだ」
「しろい」
「雪が積もっているからな」
「ユキ?」
「空から降ってくるだろ。白くて冷たい粉みたいなのが。雪だるま作ったり……このあたりじゃ雪遊びするほど積もることも、そうないか」
「ゆきだるま……」
「イメージできたら漢字もさくさく覚えやすいだろうに」

 ページを指定し、漢字ドリルに書き込ませる。

「待て。書き順がちがう」
「カキジュン……」
「平仮名と片仮名のときも、数字通りになぞってから見本そっくりに書き写せって言ったろ」

 少女は与一に教わり一から十まで数えられるようになっていた。

「ちがうとダメ?」
「そりゃあ、まあ。テストにも出るくらいだからな。どうせ漢字覚えるならついでに覚えておいて損はないだろ」

 少し考えたあと、

「それ。カキジュンないよ」

 少女がキーボードを指差した。
 与一がタブレットでレポートを書くなどする際に使っているものだ。
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