キミ観察日記


 ◇


「ここにいましたか」

 与一は、男の声で目が覚めた。

 そこは少女が読み書きを練習したり、眠ったりしている部屋だった。

 少女が眠るベッドに顔を突っ伏せ、座ったまま寝ていた与一。

「先生。……お帰りなさい。僕、紅花の部屋で寝落ちしたんですね」
「愛らしい寝顔に見とれていましたか?」
「誰がですか」
「では。寝かしつけに苦労しましたか」
「はい。いや。眠るときは、いつものように手間もかからず寝てくれました」

 与一は部屋から出て、男とリビングへ向かう。

「夜泣き……というよりは。突然起き上がったようで。叫び。暴れて」
「そうですか」
「本当に驚きました。視線が合わず、会話も噛み合わず。僕のことが見えているのか見えていないのか。わからない状態で」
「見えていないと思いますよ」
「……え?」
「明日、起きた頃には忘れているでしょう」
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