キミ観察日記
「すごーい!」
「ちらし寿司ですか」

 夕食の乗ったテーブルを、三人で囲む。

「なに先生のとなりに座ってるんだよ」

 与一は静かに食べるのが好きだった。

 それがこのところ毎回のように自分のことをあとまわしにし、少女に箸の持ち方やらマナーを教えながらの食事は、いまいち食べた気がしない。

 それでも少女に、このご飯には酢が混ぜてあり、この丸いのはイクラだと説明してやる必要があり。

 飲み物は、こぼさないように少しずつコップに注いでやるわけで。

 ーー僕のとなりに来なきゃ、面倒みてやれないだろうが
 
「紅花さんの喜ぶものを作ったんですね」
「というよりは、作らされました。カレンダーをめくっていて。ひな祭りがなにか説明させられ、ちらし寿司の話をしたら食べてみたいと」
「愛ですね」
「……先生、話聞いてました?」
「はい」
「半ば無理矢理です。まあ。どうせなにか作るんですからメニュー決めてくれるだけラクといえばラクですけど。もっと時短メニュー選んでくれと思いますね」
「いいお嫁さんになりますね」
「なりたくありません」
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