キミ観察日記


 ◇


「ぐっすり眠りましたね」

 ふかふかの布団の上でバンザイと手をあげて眠る少女。

「今夜は暴れないといいのですが」
「心配ですか」
「そりゃあ……少しは」
「君もこの部屋に布団を敷いて眠ったらどうです?」
「それは遠慮しておきます」

 二人はリビングへと移動する。

「なにか飲みますか、先生」
「今夜はやめておきます」
「どこかへ行かれるんですか」
「与一くん」
「はい」
「【罪】とは」

 えらく急だが、男はいつだって突拍子もないことを知っていたので今更だ。

 与一は、質問に答える。

「人がしてはいけない行い。正しくないことをした結果として問題にされるもの」
「では、【罰】とは」
「それらに対しての戒めでしょうか」
「それって。誰が決めているんでしょう?」
「もちろん人間です」
「そうです。人間です。神様にでもなったつもりでしょうか」
「……なければ秩序が乱れますから」
「あれば秩序は乱れないのですか?」

 与一は、唇を噛み締める。

「いいえ」
「乱れきっていますよね、この世の中。表面上は綺麗に見えても。臭いものには蓋をして、都合のいいように切り取られたニュースで溢れ帰っている」
「そう思います」
「罪を罪としておきながら。罰が、非常に甘い。そんな犯罪者にやさしいこの世の中が。私は大嫌いなんですよ」
「同感です」
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