キミ観察日記
「これは?」
「キ!」
「二つで」
「ハヤシ」
「それが三つになると」
「モリ?」
「正解だ。じゃあ四つはなんだと思う」
「わからない」
「ジャングル」
「ジャングル!」
「……冗談だ。ちなみに木をもっと多く使う漢字はいくつか存在したらしいが、その詳細は不明なんだと」

 与一が少女の世話を始めて、二週間近くがたった。

「今日は、そろばんを教えてやる」
「なにこれ?」
「だから、そろばんだと言ってるだろう。指はこう」

 与一は計算が苦手な少女に、そろばんを教えてみることにした。
 これならパズルのように解いていけるかもしれないと考えたのだ。

「弾き方は、こうだ。見ていろ」
「うん」
「一、二、三、四ーー五で上をさげて戻す。六、七、八、九。とあげて、次の十でここを動かす」
「一と一を、たしたら二?」
「そうだ」
「五と三で。えーっと。八」
「いいぞ」
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