キミ観察日記
 僕が【楽しい】とは、なんだろうか。

 自分は、どちらかというと、つまらない人間だ。
 面白い冗談の一つも言えない。

 先生のように社交的な仮面も被れなければ、誤魔化しや嘘が得意ではない。

 取り柄は根が少々真面目なことくらいではないか。

 それは、短所でもある。

 基本的に融通がきかない人間なのだ。

 ーーと、そんなことを子供に話しても仕方がない。

 与一は、新しい質問を口にした。

「逆に。嫌いなものを言ってみろ」
「きらいなもの?」
「これは、やりたくないとか。怖いとか。そういうものだ」
「わからない」

 少女は、与一が教えるどんなことにもチャレンジした。
 苦手そうに見える計算問題ですら時間をかけ、諦めずに解いた。

 頼んでもいないのに手伝いをやりたがる。
 料理や洗濯といった家のことを遊びと同じように捉えているのだろうか。

「そうか」
「ヨイチは? きらい、ある?」
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