キミ観察日記
「ヨイチもみたい?」
「ペンギンか」
「うん」
「……いや。別に」

 いまだかつて感じたことのない感情が、与一を襲う。

「ゆきだるま。つくりたい?」
「まったく」
「かまくらは?」
「……作るのはだるいが。その中にストーブとWi-Fi環境が整っているなら少し興味はある」

  ペンギンも、イルカも、雪も。

 そんなものがある景色に微塵も興味なんてない。

 ない、はずだった。

 それでも、

「今夜は花火大会がある」

 ーーお前となら見てやっても悪くない

「ハナビって?」
「空に咲く花だ」

 真っ暗な、夜の空に輝く花。

「すごい!」
「家の中では、できないが。この部屋からなら特等席だろうから。空に打ちあがったとこ見るか」
「うん」
「始まるまでに風呂はいって、いつでも寝る準備しておけ」
「うん」
「……そういや。お前の部屋のクローゼットに、あれがあったな」
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