キミ観察日記
 はしゃぐ少女をみて、どうしても与一には腑に落ちないことがあった。

 虐待を受けていたにしては、愛嬌がある。

 もちろん全員がそうとは限らないが、自分の知る限りには、こんなにも無邪気に笑わない。

 そもそもに、無慈悲に傷つけられた人間が、他人に心を開くものなのか。

「……僕は。未だに信用できないのに」
「ヨイチ?」

 心配そうに与一を見上げる少女。

「僕には」

 与一には、味方だと思える人間がーー思いたい人間が一人しかいない。

「……先生しか」

 俯く与一。

「いたいの?」

 少女が、小さな手で、与一の頭を撫でる。

「ーーああ、そうか」

 顔をあげると、少女と、かつての自分が重なった。

「お前にとって僕がそうなんだな」
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