キミ観察日記
 少女は、男の話が、半分も理解できなかった。

 男は、少女に話を理解させるつもりもなかった。

 それでも男は話し続けた。

「そんなわけで私は、義務教育をまともに受けたことがありません。

学校の勉強は無意味だ。
教諭を信用してはならない。

同じ教室で授業を受けるだけの他人を友人と称し無条件に親切にするのも、ましてや特別な感情を抱くのも決してやめろ。

――そう説く父の気持ちなら、わかります。

しかし、皆が皆、無意味で信用に値しないかと言われれば、そうとも限りません。

いい人間はいました。

私が関わってこなかっただけで。
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