キミ観察日記
「は……?」
「そんな顔しないで下さいよ」

 与一にとって、お前を殺したいと言われるような。

 そのくらい辛いものだった。

 いいや、それ以上の衝撃が走る。

「冗談ですから」

 男が、こんな冗談を言うだろうか。

「君がどれほど紅花さんが大切か。よくわかりました」

 こんなにも世話をしてやって。
 金をかけてやって。

 ……殺したい?

 守っているわけじゃなかった?

 与一は、男が、わからなかった。

 これまでも理解できない行動を目にしてきたが、比べ物にならないくらいには。
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