キミ観察日記

「矯正は、すぐに終えられるようなものではないです。これから数年かけ永久歯が生え揃うまで根気強く行っていく必要があります。手間がかりますし、なにより、自由診療なので高額だ」
「その通りですよ」
「僕は、先生に無償でやってもらいましたが。そうでなければ、まず受けられませんでした」
「それは君へのささやかなプレゼントです。日頃あまり手をかけてやれなかったので、せめて、そのくらいはと思いましてね。ただの自己満足ですよ」
「僕は月に一度、先生に会えるのを、本当に楽しみにしていたんです」
「今夜はえらく素直ですね。いつもなら思っていても口にしない君が」
「先生は。僕にしてくれたことを、紅花にもーー」
「君は、大きな勘違いしているみたいですが」

　どこかで、その可能性を感じていなかったわけじゃない。

　ある意味それが普通の対応で。

「私は紅花さんの面倒をみるつもりはありません」

　だけど違っていて欲しかった。

「そんなのおかしい」