キミ観察日記
「先生っ……」

 男は、それをバリバリと噛み砕くと、呑み込んでこう言った。

「生かしておく気なんてなかった。できるものなら。苦しめて、苦しめて、いっそのことバラバラにして。少しずつ」

 ――少しずつ……?

「でも。私には。できなかった」

 ーーなにを言っている?

「あの子には、なんの罪もないと。わかっている。それでも、あの子が生きていると辛い」
「なんなん……ですか、先生」
「だから。終わらせることにしたんです」
「……終わらせるって。なにをですか」
「与一くん」
「はい」
「おやすみなさい」

 そういうと、男は立ち上がり、家から出ていった。

 なにを言われているか、わからなかった。
 それでもわかりたかった。

 少しでもいいから、あなたを理解したい。

 与一は、ただ、そう感じた。

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