キミ観察日記
「あ?……そうだな。忙しいんだろ、あの人も」

 男は、一週間帰宅していない。

「ヨイチ、センセイとゼッコウした?」
「は?」
「ゼッコウ。なかのいいこが、なかよくなくなること」
「いや絶交の意味くらいなら知ってるが。どこでそんな言葉覚えた」
「まんが」
「……そうか。まんが読むようになったか」

 男が紅花に与えているタブレットには、子供向けの漫画が幾らかインストール済みだ。

「ゼッコウ?」
「してねえよ。どうせ仕事忙しくて泊まり込みなんだろ。それか近くのホテルでも泊まってるか。……あのひとモテるからな、あれでも。大人なんだ。好きにさせてやれ」

 そう言いながらも、男のことが与一は心配だった。
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