キミ観察日記
「センセイがね。わたしのは、なおしてくれた」
「聞いたよ。虫歯だらけだったんだろ」
「こわくないよって。すぐによくなるよって。ほんとによくなった」
「痛かったか?」
「うん」
「よく頑張ったな」
「センセイががんばってくれた」
「お前も頑張った」
「……そうかな? いたくないところも、なおした」
「おそらくは、目に見えないところーーレントゲンにしか映らないものを少しずつ進めてくようなこともしただろうが。まだ平気だと放っておくと、余計痛んだり取り返しがつかなくなったりするからな」

 少女は、ヨイチをじっと見つめる。

「なんだよ」
「ヨイチは、むしばない?」
「今はないが昔はあった」
「なんで?」
「……なんでもなにも。あったんだから仕方ないだろ。ちなみに歯並びも悪かった」
「はならび?」
「歯がガタガタだったんだ」
「なんで?」
「なんでなんでうるせえ」
「キレイだよ」
「もう治してもらったからな」
「センセイに?」
「ああ。……紅花も。僕みたいな歯になりたいか」
「うん!」
「大変だぞ? ケアもしなきゃならないし。まあ。大人になってから始めるより今やっておくとメリットも大きいが」
「ヨイチといっしょ」
「……僕となら頑張れるか?」
「うん!」
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