敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
◇地味で控えめな彼女
これは決してノロケではない。
けれど、今恋人として隣にいる彼は、私の理想すべてを兼ね備えた最高の男性だ。
毎日オフィスできびきびと仕事をしている姿はカッコよく、高級フレンチレストランで女性をエスコートするスマートな姿も素敵すぎる。
ただいま私が目の当たりにしているのは後者で、席に案内されるときもレディーファーストを忘れず、そっと背中に手を当てて先に促してくれる。
三月中旬でまだ肌寒い今日、私が着ていたトレンチコートをクロークに預けるため、私の後ろに回って脱ぐのを手伝ってくれたのもドキドキだった。
ただ、今夜のディナーはふたりきりではない。並んで席についた私たちの向かい側に座るのは、そわそわとした様子の私の母だ。
彼は魅惑的な笑みを浮かべ、母に改めて綺麗な一礼をする。
「花乃さんとお付き合いをさせていただいております、桐原 生巳と申します」
……まさか、こんなことになるとは夢にも思わなかった。
憧れでしかなかった桐原専務が、私の母に挨拶をすることになるなんて。
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