敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
しかし私からすれば、仕事もプライベートも今が一番楽しいときだ。

営業部に配属され、先輩方のサポートや事務作業もやっと手慣れてきたところだし、おひとり様だって構わないから、これからもっと自由な生活を満喫したいと思っているのに。

ふたりで人気のパン屋に足を運んで買ってきた、卵と野菜がたっぷり挟まったこのサンドイッチはとても美味しいけれど、母の言葉を思い出すとため息がこぼれた。

エイミーも不満そうに口を尖らせている。


「やだなぁ、カノちゃん帰っちゃったら寂しすぎる。お母さんにはなんて返したの?」


私はサンドイッチにかぶりつこうとして、ぴたりと動きを止めた。若干決まりの悪さを感じながら答える。


「……『お見合いなんてしないよ。いい人見つかったから』って」

「えっ、見つかったの!?」

「いや、咄嗟に嘘ついちゃった」

「なんだ、びっくりした」


エイミーが前屈みになったのは一瞬で、すぐに脱力して椅子の背もたれに背中を預けた。

しかし、つい発してしまったデタラメなひとことが、自分の首を絞めることになったのだ。
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