敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
「問題なのは、『じゃあ、その人に会わせなさい!』ってお母さんがめちゃくちゃ乗り気になってること……」

「うわー、沼」


背中を丸めてぐったりする私に、エイミーは気の毒そうに笑った。

本当に、どんどん深みにはまっていく気がする……。『彼に聞いてみるね』と曖昧に濁して昨日はなんとかやりすごしたけれど、いつまでもごまかせるわけがない。

母は小躍りしそうなくらいテンションが上がっていて、お見合い話はそっちのけで架空の彼氏に会いたがっていた。直接顔を合わせるまで絶対に諦めないだろう。

サンドイッチを食べるのもそこそこに、ふたりしてしばし唸っていると、突然エイミーがなにかを思い立ったようにバッと腰を上げる。


「よし、ここはボスに相談!」

「えっ!?」


予想外の発言に、私はギョッとする。

〝ボス〟とはエイミーが使っている不破社長の呼び名だ。社長にこんなくだらないこと相談していいの!?

同じフロアにある社長室に向かってさっさと歩いていく彼女を、私も慌てて追いかける。
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