敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
◆嘘を本当にしたい彼
高校時代の俺は、成績がいいだけで学級長やら生徒会長やらに選出されていたが、教師の目が届かないところで荒れる様は不良よりタチが悪い……と、友人たちに声をそろえて言われた。
荒れるといっても、酒や煙草は嗜む程度で、平穏な学校生活を壊すような奴らを軽くシメたり、ケンカの仲裁に入って両方ひれ伏させたり……といったくらいだ。
今となっては、これらの過去はあまり思い出したくない。こんな時代があったことを周囲の人間に感づかれぬよう、現在は紳士的で穏和な姿勢を貫いているのである。
当時、チャラチャラしていて俺と対立することも多かった烏丸が、今好青年を気取っているのも同じ理由だ。
お互いに昔の素行を知らないフリをして笑顔で会っているが、あいつも心の中では悪態をついているに違いない。
そんな悪友と顔を合わせる同級会など興味ないが、『生徒会長をやっていたお前が来なかったら、会社に黒歴史をバラす』とうるさい野郎共がいるので、毎回仕方なく顔を出している。
今日は花乃とピリピリした雰囲気になったこともあり、なおさら気が乗らない。
ここ数日は、なぜかふたりでいるときもよそよそしく、俺と軽く距離を取る以前の彼女に戻っている。誕生日はあんなに素直だったのに。