敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
そう、ここにいらっしゃる美人秘書さんは社長の奥様なのだ。

去年結婚したばかりでとても仲睦まじいのだけど、社長が甘い発言をしても仕事中の有咲さんは秘書としての姿勢を崩さないので、そのやり取りが面白い。

ちなみに、私たちより二歳上の有咲さんにもエイミーはタメ口だし、なぜか有咲の〝き〟を取って〝アリサ〟と呼んでいる。

私も仲よくさせてもらっていて、今回の話を聞かれても問題ないため、エイミーはさっそく例の件についての相談を始めた。

ひと通り話し終わると、有咲さんはやや難しい顔をして唸る。


「ご両親にしてみたら心配か。カノちゃんって社長令嬢なんだもんね」

「まあ、一応……。兄がいるから跡取りは問題ないんですけどね。だからこそ、ただ両親の不安を解消させるためだけに戻るのは納得いかなくて」


つい口調が刺々しくなる私を、腕組みをして座っている社長が見上げて話をまとめる。


「つまり、両親も信頼できる恋人がいればこっちにいる理由になって、見合いも帰郷もひとまず免れられるんだな?」

「はい、おそらく」


一時的ではあっても東京に残ることができれば、また別の打開策が思いつくかもしれない。とにかく、今帰るのだけは嫌だ。
< 13 / 153 >

この作品をシェア

pagetop