敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
「デカいのは図体と口だけだな。この汚い手で彼女になにをした? すべて吐け」

「っ……く、車に乗せようとしただけだ! そこの女にそそのかされたんだよ」


あっさりと白状した男は、美香を顎で示した。彼女は憤りを露わにするも、「なっ……!」と口をパクパクさせているだけで、なにも返せない様子。

おそらく嘘はついていないだろう。美香がうまいことを言い、花乃を連れ去って襲わせようとしたというところか。

未遂で済んだとはいえ、決して許せはしない。


「彼女に触れただろう。俺を怒らすにはそれだけで十分だ」


激情をなんとか抑えて言い、小指を軽く捻れば、男は「いてててて!!」と間抜けな声を上げる。本当に浅はかで、情けない。

ふたりの行いに対して然るべき罰を与えたく、俺はひとまず警察を呼ぼうとした。しかし、花乃が『なにもされていないし、大事にはしたくない』と言い張るので、仕方なく男の名前や住所を控えて厳重注意に留めた。

解放された男はさっさと走り去っていったが、美香はいまだに青ざめた顔で立ちすくんでいる。俺のそばに自分の車を置いたままでは、逃げるに逃げられないのだろう。
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