敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
断られるのは当たり前だと重々わかっている。なのに、ちょっぴりショックを受けている自分が恨めしい。

それを誰にも悟られないよう努めて平静にしていると、専務の淀みのない瞳がこちらに向けられる。


「森次さんは自分が任された仕事以外にも、経営企画に必要な情報を共有してくれます。それも、誰かに言われたからでなく自発的に行っている。そういう人は貴重ですから、もちろん、私も彼女を手離したくはありません」


最後のひとことに、ついドキリとしてしまった。恋愛的な要素はなにもないけれど、まるで自分が専務のものになったみたいで。

彼が私をそんなふうに評価していたことも初めて知って、嬉しさがじわじわと込み上げてくる。


「ですが、偽りの恋人関係になったとして、それをいつまでも続けるわけにはいかないでしょう。いつかきっとボロが出る。そうなったとき、森次さんが非難されるのは目に見えています」


社長へと視線を戻した専務が、硬い声色で言うのはごもっともだ。バレたら私だけでなく、専務にだって多大なる迷惑をかけることになるし、間違いなく母に強制帰還させられる。

それくらい社長も推測できないはずがないのに……と思いつつ彼を見やると、その顔には不敵な笑みが浮かんでいてはっとする。
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