敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
「偽りじゃなく本物になるかもしれない」
含みのある声でそう口にされ、専務も私もピクリと反応した。社長はおもむろに腰を上げ、専務の隣に歩み寄ってくる。
「リスクは大きいが、その可能性も十分あるだろ。それに、偽りでも恋人の存在を作っておくのは、今のお前にとっても悪い話じゃないと思うが」
……ん? それって、どういうことなんだろう。専務にもなにか事情があるの?
彼は伏し目がちになってなにかを考えている様子で、少し気になったものの今聞くことはできない。
意味深な瞳を向けていた社長は、さっぱりとした口調になって続ける。
「まあ、ひとまずカノちゃんのお母さんと会って納得してもらって、時間稼ぎするのがいいんじゃないか。そのあと、別れたってことにして他の案を模索してもいいし。戦略を練るのも、危ない橋を渡るのも得意だろう、桐原は」
「……後者は別に得意なわけではありませんよ」
気だるげに茶々を入れる専務に、社長はクスッと笑い、ドアのほうへと歩きだす。
「行くぞ、アリサ」
「あ、はい……! カノちゃん、また経過を聞かせてね」
有咲さんは私に手を振り、さっさと出ていってしまう社長のあとを慌てて追いかけていった。
含みのある声でそう口にされ、専務も私もピクリと反応した。社長はおもむろに腰を上げ、専務の隣に歩み寄ってくる。
「リスクは大きいが、その可能性も十分あるだろ。それに、偽りでも恋人の存在を作っておくのは、今のお前にとっても悪い話じゃないと思うが」
……ん? それって、どういうことなんだろう。専務にもなにか事情があるの?
彼は伏し目がちになってなにかを考えている様子で、少し気になったものの今聞くことはできない。
意味深な瞳を向けていた社長は、さっぱりとした口調になって続ける。
「まあ、ひとまずカノちゃんのお母さんと会って納得してもらって、時間稼ぎするのがいいんじゃないか。そのあと、別れたってことにして他の案を模索してもいいし。戦略を練るのも、危ない橋を渡るのも得意だろう、桐原は」
「……後者は別に得意なわけではありませんよ」
気だるげに茶々を入れる専務に、社長はクスッと笑い、ドアのほうへと歩きだす。
「行くぞ、アリサ」
「あ、はい……! カノちゃん、また経過を聞かせてね」
有咲さんは私に手を振り、さっさと出ていってしまう社長のあとを慌てて追いかけていった。