敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
一気に静かになった部屋の中、腕を組んだ専務は呆れ交じりのため息を漏らす。


「橘さんはやや口が軽いので、今の話を知られているのは若干心配ですね。社長も相変わらず突飛なことを言い出しますし、そのくせ人任せで困ります」


少々迷惑そうな声を聞き、やはりこれ以上巻き込むわけにはいかないと思い直す。

彼の正面に身体を向け、しっかりと告げる。


「あの、私やっぱり母に正直に打ち明けます。でも簡単に折れたくはないので、なんとか説得します。お騒がせしてすみませんでした」

「待って」


苦笑して頭を下げ、踵を返そうとしたとき、ぐっと腕を掴まれドキリとした。振り向けば、眼鏡の奥の綺麗な瞳に捉われる。


「私でよければ、かりそめの恋人にならせていただきますよ」

「……へっ!?」


予想と真逆の宣言に、私の声が裏返った。

え、嘘。本当にいいんですか!? 絶対承諾しないと思ったのに!

目を見開く私に、彼はそっと手を離し、控えめな笑みを浮かべて理由を説明する。
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