敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
しかし、森次さんは俺の胸に額をくっつけたまま微動だにしない。死んでいないだろうかと彼女のつむじを見下ろす俺に、美香お嬢様は焦りと動揺を露わにする。
「そ……そんなの、ただの気の迷いよ。あなたは私と婚約するんだから」
「その気はないと何度も申し上げているではありませんか」
「私が諦めていないのよ!」
声を荒げる彼女に、俺は心底うんざりする。
いくら説得しても、毎度こうなるのだ。暖簾に腕押し状態で、自分が諦めていないから婚約話は有効だと言ってのける。俺の意思は完全無視だ。
ただ、今回はさすがに危機を感じているに違いない。焦燥感たっぷりな様子でこちらに一歩近づき、眉を下げて必死に食い下がってくる。
「私、桐原さんを本当に愛しているの。形だけでも夫婦になりたいのよ。そうすればあなただって、私の家の財産や父の会社を欲しいままにできるじゃない。ねえ、その子を想ったままでもいいから──」
「くだらない……反吐が出る」
一方的に押しつけられる願望を、冷たく鋭い声で跳ね返した。
それと同じ視線を突きつけると、うるさいお嬢様はびくりと肩を震わせて口をつぐむ。
「そ……そんなの、ただの気の迷いよ。あなたは私と婚約するんだから」
「その気はないと何度も申し上げているではありませんか」
「私が諦めていないのよ!」
声を荒げる彼女に、俺は心底うんざりする。
いくら説得しても、毎度こうなるのだ。暖簾に腕押し状態で、自分が諦めていないから婚約話は有効だと言ってのける。俺の意思は完全無視だ。
ただ、今回はさすがに危機を感じているに違いない。焦燥感たっぷりな様子でこちらに一歩近づき、眉を下げて必死に食い下がってくる。
「私、桐原さんを本当に愛しているの。形だけでも夫婦になりたいのよ。そうすればあなただって、私の家の財産や父の会社を欲しいままにできるじゃない。ねえ、その子を想ったままでもいいから──」
「くだらない……反吐が出る」
一方的に押しつけられる願望を、冷たく鋭い声で跳ね返した。
それと同じ視線を突きつけると、うるさいお嬢様はびくりと肩を震わせて口をつぐむ。