敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
俺には四歳年上の兄がおり、彼が次期社長となって跡を継ぐと決まっている。しかし、父は俺にも白桐フーズに入らせ、自分が退任したあとは二人三脚で運営させたかったらしい。

そうやって決められていることに不満を覚え、父にも優等生な兄にも反発し、一時は絶縁寸前まで関係が悪化したほどだ。

大学時代にバイト先で知り合った破天荒な先輩のおかげで、縁を切らずに済んだのだが。


「なんとか和解して、数年白桐で働いたあと、社長と一緒にパーフェクト・マネジメントを立ち上げたんです。彼と新しい事業に挑戦したい気持ちが大きくて、こちらの道を選びました」

「そうだったんですか」


こちらに膝を向けて真剣に聞き入っていた森次さんは、納得するように頷く。


「私も社長令嬢と呼ばれるのは嫌だったので、気持ちはよくわかります。レールを外れるところから、強制的にお見合いさせられるところまで一緒なんて。似た者同士なのかもしれませんね、私たち」


ふふっとこぼされた笑みは、はらりと舞う桜の花びらのごとく可憐で、なぜだか胸が穏やかに波打った。

確かに、俺たちは似た部分が多い。そのせいか、以前から森次さんと接するのは心地よく感じていたが、今はさらに心が丸くなっている気がする。
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