敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
眼鏡越しに彼女を見つめていると、ふいにその表情がやや曇る。


「でも、美香さんにあんな態度を取ってしまってよかったんですか? もし彼女がお父様に告げ口したら、取引に支障が出たりするんじゃ……」


父の会社への影響を心配してくれているようだが、もちろんなにも考えずにあんなことをしたわけではない。


「おそらく大丈夫でしょう。小金井運輸に限らずですが、物流会社は人手不足が深刻化している。白桐フーズは他の食品会社と協力して共同配送を行う計画を立てているので、小金井運輸が必ずしも必要なわけではないんですよ」

「なるほど……。じゃあなおさら、美香さん側は契約を切られるようなマネはしたくないですね」

「そういうことです」


森次さんは飲み込みも早い。俺はコーヒーをひと口飲み、満足した気分で笑みを向ける。


「森次さんのおかげで、ひとつ厄介事が減りました。ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ」


お互い改まって頭を下げた。しかし、よくよく考えると完全に不安要素がなくなったわけではないと気づき、「……いや、まだ油断はできないか」と呟く。
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