敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
続けて、はっきりと問いかけてみる。威圧感を出さないよう、なるべく穏和な口調で。


「私のことが嫌ですか? それとも、手を出されると思っている?」

「っ、違います!」


即座に首を振ってきっぱりと否定され、俺はやや面食らった。

森次さんはこちらを振り返りながらそろそろと視線を上げ、眉を下げた上目遣いで見てくる。男を誘う仕草を無自覚にされ、不覚にもドキリとした。

なぜだろう。今日はやけに心臓を動かされる。


「いつも優しくて、誠実な専務のことは信頼していますし、横暴な人ではないと十分わかっています。ただ……」


そこまでで一度唇を噛んだ彼女は、肩にかけたバッグの紐をぎゅっと握り、意を決した調子で再び口を開く。


「恥ずかしながら、男性経験がほとんどないんです。付き合った人も学生時代にひとりきり、しかも清い関係だったので、男の人の家にお泊まりするとなると緊張でおかしくなりそうで……って、なにを暴露してるんだろう私……!」


急に饒舌になったかと思うと、飛び出してきたのは正直な告白。彼女は赤面して頭を抱えている。
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