敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
ただ、帰ろうとした理由はそれだけじゃない。

小金井美香さんが見張っているかもしれないというストーカーチックな話を聞いて、私は密かにギクリとしていた。

なぜなら、私も他人事ではなく……眼鏡を押し上げている専務を、会社で密かに撮らせていただいた写真がスマホに収められているのだから!

万が一これがバレてしまったら、私もストーカーと同様だと認識されるに違いない。偽りの恋人関係が終了するどころか、会社にだっていられなくなる。

絶対バレないように気をつけよう!と内心必死になり、カップを持つ両手に力が入る。そこへ、バスルームから専務が戻ってきたので、私は平静を装い、とりあえず普段通りに微笑んでおいた。

 *

カビひとつない白く清潔なバスルームに、浴槽のお湯が揺れる水音と私のため息が響く。

ああ、お風呂をお借りしているだけでものすごい背徳感……。毎日使われているであろうシャンプーやボディソープが、彼の存在をしっかりと感じさせてくるんだもの。

ちょうどいい温度のお湯に肩まで浸かり、今日の出来事をあれこれと振り返ってみる。
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