敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
そういえば、美香さんに対する専務の態度は少しひやっとしてしまった。

どんな顔をしていたかは見ることができなかったけれど、声はとても冷たく鋭かった。いつも優しくて穏やかな彼にも、あんな一面があるんだ。

美香さんはだいぶ強そうな印象だったから大丈夫かな。自分だったら立ち直れない気がする。

でも、抱きしめる彼の腕は包容力があって、とても心地よかった。おでこまでしっかり密着させられていたのは、美香さんに私の顔を見られないようにするためだったのだと、今ならわかる。

本当に好きな相手には、もっと愛情を込めて抱くのだろう。『部屋まで我慢できなかった』とか『可愛い』だとかの言葉も、もっと甘い声で……。


「……死ぬ」


想像するだけでのぼせそうになり、早々と湯船から脱出した。


しかし、私の心臓は休める暇がない。

着替えも専務の服を貸してもらったのだが、トレーナーに首を通した瞬間に、アロマないい香りが鼻腔をくすぐり、またしてもドキドキした。

男の人の服を着るって、その人の香りが染みついたものを全身に纏うわけで、実際にしてみると……結構いやらしい。
< 48 / 153 >

この作品をシェア

pagetop