敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
しかし、こんなふうにして嫌われては元も子もない。いたずら心はおまけのようなもので、ただ愛したい気持ちのほうが断然大きいのだから。


「少し意地悪が過ぎましたね」


苦笑交じりに言い、俺の下で縮こまっている彼女の上体を起こして優しく抱きしめる。


「怒っているわけでもないし、怖がらせたいわけでもありません。ただ……抑えきれなくなりそうなんですよ。私も男ですから」

「……なにを抑えきれないんですか?」


よく意味がわからない、といった調子で問いかけてくるこの子は、本当にうぶだ。俺はクスッと笑いをこぼし、耳元で囁く。


「欲情」


やっと理解しただろうか、彼女はカチッと固まった。抱きしめていた腕を解いてベッドを下り、サイドテーブルに置いておいた眼鏡をかける。


「準備をしましょう。遅刻しますよ」


紳士の皮を被って何事もなかったように声をかけるも、森次さんは湯気が出そうなほど赤い顔でちょこんと座っている。その姿も可愛らしいと思いながら、先に寝室を出た。

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