敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
その後、準備を整えて慌ただしくやってきた森次さんと、簡単に朝食を済ませて家を出た。
食事はだいたい彼女が作ってくれる。人が作った料理を食べるのも久々で、その温かみや美味しさに元気をもらっている。
元調理師である社長の手料理を食べる機会もそれなりにあるが、あの人の料理はプロ並みに凝ったものが多いのでまた別だ。
通勤は俺の車で一緒にしていて、会社の駐車場に着いたところで、少し時間をずらしてオフィスへ向かっている。
帰りはなるべく同じくらいの時間に上がることにしているが、俺が遅くなる場合は近くのカフェで待ってもらっていたりもする。
あれから不審者に怯えることもなくなったし、小金井美香も現れないので、ひとまず安心だ。
同居していることは誰にも明かしていない。俺たちの仲について興味津々に踏み込んできては、悪気なく情報を漏らしてしまう口軽なアイドルがいるからだ。
今日も俺は温厚に業務を全うし、森次さんも静かに事務仕事をして、ただの上司と部下の関係に徹している。
そうして、昼休憩に入った直後のこと。不破社長との話し合いを終え、社長室を出ようとドアを開けたとき、「お疲れ様でーす」と元気な声が響いた。